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2006年8月2日水曜日

真空管式のAM/FMステレオレシーバーって

かって電子部品のキーパーツ的な存在だった真空管が姿を消してから久しく、真空管ってどんなものか?実物を見たことがない世代も多くなってきていると思います。

MT管(ミニチュア管)で
高さは5〜6cmが一般的
右に真空管の画像を付けておきます。
真空管時代の後期に出てきたMT管(ミニチュア管)で、それまでのどれよりも小型に出来ていて性能、品質ともに優れていました。構造的には、ガラスチューブの内部に電極が収まっていて、それと電気的に接続されたピンが外部に出て、そのピンを直にソケットに差し込むようになっています。

日本での真空管の全盛時代は、昭和二十年代初めから昭和四十年代前半だった様に記憶しています。ラジオや白黒テレビなど民生品を始め多くの産業機器にも使われた真空管ですが、ここではFMステレオレシーバーに使われた例をご紹介しておきます。

最初のトランジスタ式のFMステレオレシーバーが登場したのがは昭和三十年代後半でしたが、昭和四十年代半に真空管時代は終わりました。

以下の画像は、トリオのAM/FMステレオレシーバーですが、フロントパネルには「AM-FM Stereo Multiplex Receiver」 と表示されています。
昭和四十年頃のモノとしてはハイグレイドなクラス、パネル幅は430mmのBTS仕様で現在のモノと同サイズですが、重量は二倍かもっと重く、これには真空管(MT管)が16本使用されています。



五球スーパー(フロント)
左が音量ツマミ、右が選局ツマミ
五級スーパー(リヤ)
五本の真空管が使用されている
この頃の一般家庭では、ラジオと言えば、五球スーパーが普及していた時代で、その名の通り五本の真空管が使われていました。
ですから、16本が使用されていることから、それだけの機能強化と性能向上や安定性に重点が置かれたレシーバーだったと言えます。なお、五球の「球」は真空管のことで、初期の真空管は照明用の電球とその形状が似ていたため球と呼ばれたのだと思われます。

このFMステレオレシーバーを入手した昭和四十年(1965年)頃、東京都内で聴取できたFM放送は、NHK東京と実用化試験局としてのFM東海(後のFM東京、今はTFM(TOKYO FM))の二局だけでした。

その頃は、両局とも既にステレオ試験放送を開始していて、当時の数少ない?FMリスナーはその高忠実度な再生音と立体感(臨場感)に毎晩聴き入っていました。それも本放送が始まるだいぶ前のことで、FM放送を聴けること自体がステイタスだった時代のように思い出されます。

余談ですが、当時のFM放送の開局までの経緯を簡単にご紹介しておきます。
NHKは、日本で初めての本格的な超短波放送(FM放送)の実験放送局として、東京、大阪など全国主要都市で昭和32年(1957年)に開局。昭和38年(1963年)12月16日にはNHK東京でステレオ試験放送を開始しました。なお、本放送開始は昭和44年(1969年)3月1日からでした。

一方、FM東海は昭和33年(1958年)に「東海大学超短波放送実験局」として放送を開始、昭和35年(1960年)には「東海大学超短波放送実用化試験局」として放送を続けました。そして、昭和38年(1963年)にはNHK東京と同時にステレオ試験放送開始。昭和45年(1970年)、ほかの出資元も増やした株式会社形式の民間放送に移行、関東初の民間FMラジオ放送としてのFM東京が誕生しました。

以下は、私のお宝(ガラクタ)のAM-FM Stereo Multiplex Receiverですが、真空管による機器の内部がどの様になっていたのかが垣間見えます。

シャーシーは二段構造になっています。
画像では上半分の右側から左へ高周波増幅部 → 周波数変換部 → 中間周波増幅部 → 検波部 → ステレオ復調部と直線的に真空管とコイルが列んでいます。

画像の下半分、出力トランスが二つと右側が電源トランスです。出力トランスの下側に低周波増幅部の真空管があり、左端の真空管はイコライザ部です。一番下の黒く細長いモノが、AM受信用のバーアンテナです。
 
左が、高周波部分のアップです。四角形の金属板の中にあるのが周波数可変用のバリコンです。円形のプーリーからダイアル指針を左右に動かす為の糸が見えています。
真空管を挟み込むようにある直方体の多くは、中間周波トランスと言う、言わばコイルが内蔵されています。

シャーシーを下側から見た内部の様子です。
真空管のソケットや、ラグ版、ボリューム、ロータリースイッチなどへ、コンデンサーや抵抗そして五色のビニール被服の銅線が要所要所で半田付けされています。
 
 画像の右上にある円形のモノは選局ダイアルの軸に付いたフライホイールです。
鉛製で、ある程度の重量があり、ダイアルを回した時に慣性でスムーズに回る仕組みになっています。
見るだけでも沢山のパーツを取り付けている訳で、生産工数も掛かり、個々のパーツのバラツキなどもあり、規格を満たす為の苦労は並大抵ではなかったようです。

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